「お米食べたい…」
「、ここはイギリスだよ」
充分承知している指摘をポッターから受けて、はフォークを噛み締めながらため息をついた。ときどきふくろう便で実家から仕送りがあるものの、勿論限りがある。
「見ているだけでおなかいっぱいになってきたわ。屋敷しもべ妖精に頼んだら日本料理が出てこないかしら」
「あら、食べたいなら自分で作るべきよ。そもそも屋敷しもべ妖精に任せるという、」
「とにかく!朝御飯は食べないと元気がつかないよ。ほら」
ハーマイオニーの琴線に危うく触れるところをロンが遮って、が好んで食べるものをわざわざ取り皿に分けてやる。ありがとうと小さくお礼を言って受け取ろうとしたところで、後ろから差した影に気が付いた。
「君はそうやって男に物を乞う姿勢が上手い、さすが穢れた血だ」
「……ドラコ、何かよう?」
ローブを翻して両腕を組み、いかにもと言った風体で偉そうに立っていたドラコにすっと冷たい視線を投げかける。まさに一触即発といった雰囲気に三人は固唾を呑んだ。は苛立った様子で握っていたフォークをテーブルに叩きつける。
「朝から非常に不愉快な光景を見て今の僕は虫の居所が悪い」
「あら奇遇ね、私もちょうど貴方を見てそう思ったところよ」
唇が触れあいそうなほど近づいているというのに微塵も恋愛めいた様子を感じさせないのも凄い。お互い譲らないほどにたっぷり睨みあってから、機敏な動きで距離を取った。すかさず利き手に杖を持つ。
「エクスペリアームス!」
「オパグノ!」
ドラコの専制に対し、の呪文で食卓に並べられた食べ物が動物へと姿を変えた。これらが突進し二つの呪文は相殺される。
「だったらこれはどうだ。サーペンソーティア」
「信じられない、女性に対して蛇を出す神経を疑うわ。ステューピファイ」
「君のその迷い無く麻痺呪文を言う行為こそ僕は恐ろしいよ」
「そうね、貴方は度胸すらない臆病者ですもの」
「なんだって…!その減らず口塞いでやる」
呪文と言葉の応酬が激しさを増し、さすがに周りの生徒がいつものグリフィンドールとスリザリンの喧嘩と思って騒いでいたのを神妙に止めようとする。これを聞きつけて先生が来たらどうあがいても減点対象だろう。
「ドラコ、そんな小娘相手にすることないわ」
「なんですって?」
「落ち着け、挑発に乗るだけ損だって」
「邪魔をするな、ポッター!」
せっかくパンジーとハリーが止めに入ったものの、火に油を注ぐ結果となる。明らかな人選ミスであった。もはや魔法云々というより取っ組み合いに変化し、見るも耐えない惨状である。
「ねえ、ハリー。僕はとても彼らが付き合っているだなんて信じられない」
「そうだね…ロン、これが痴話喧嘩だなんて僕も認めたくないよ…」
「あなた達、軽口を叩いてないで止めなさい!」
ハーマイオニーの叱咤にハリーとロンは仕方なく杖を持ったのであった。
この後、午後のティータイムで楽しそうに談笑するドラコとを見て、三人はますます不思議だと首を捻ることになる。
(120208) まっふーへ!