「伊達、しりとりしよう」
休日の朝早々、はこたつでうたた寝していた政宗の背中を跨って、唐突な提案を告げた。
「しりとりだァ?ガキじゃあるまいし」
「"すーき"!」
「……"きらい"」
「"いけず"」
「"随喜"」
「誰がわがままよ」
「なんだもうgive upか」
「まさか!"君がすーき"」
「なんで二回言った?…"ギター"」
「"愛してる"」
「……"流説"」
「"付き合って"」
「"手桶"」
「"結婚してください"」
「"いいえ"」
「だーからー!!つれない!!!」
ドンドン政宗の背中を叩くが、あーそこそこ、と肩たたき程度にしか思われてない。それがまた異様にむかついたものだからついでに頭も叩いておく。そこでようやく応えたのか、政宗はゆっくり起き上がった。もそれにあわせてしぶしぶながら隣に座りなおす。
「てめえの言葉は軽いんだよ」
「はあ?愛に軽いも何もないでしょ」
「その告白何回目だ」
「……うーんと、十回?」
「百回は超えてるぞ、この鳥頭!」
仕返しとばかりに政宗がの頭を小気味よく叩いた。ドメスティックバイオレンスだ、と主張しては怒ったが、政宗は無視を決め込んで二度寝の態勢に入ろうとする。そうはさせじと彼の肩を揺すって起こそうとする。
「休日くらい寝かせろ」
「つまんなーい、起きてデートしよ」
「却下」
「………」
取り付く島も無い。は途方に暮れて、枕を抱え込むこの幼馴染を睨んだ。そう、幼馴染。家が隣で、親同士が仲がよくて、その子供は同い年でかっこいい。漫画みたいなこの奇跡に政宗は運命だと思わないのだろうか。以前は問うてみたが、運命に左右されてたまるかと怒られたことがある。
そうやって何度も怒られたけど、冒頭のように戯れごとにも付き合ってくれる優しい男だとは知っていた。だからこそこうして好きだ、好きだと繰り返し思いを伝えているのだが、一向に振り向いてもらえない。
「政宗はどうしたらわたしのこと好きになってくれるのよお」
とうとう我慢の限界とでもいうように、の目からぽろりと雫が零れ落ちた。いつもと様子が違う態度にぎょっとして政宗は起き上がる。
「なに、いきなり泣いて」
「わたしだってね、好きっていうの勇気がいるんだから!軽いなんて言ったら怒るんだから!!どんな気持ちで毎日毎日告白してると思ってんのよばかー!!!」
えんえんと子供のように泣きじゃくるものだから、慌てて政宗は頭を撫でてやったり、宥めたりする。そのままにダイブされ、二人してベッドに倒れこんだ。
「悪かったよ…」
「それじゃ泣き止んでやんない」
「好きだ」
「……うん」
「愛してる」
「、うん」
「付き合え」
「うん!!!」
「しりとりになってねえだろ、ばーか」
(120210) ナユタさんへ