お茶を飲みに行こうなどと軟派にありがちな言葉を吐く若い男たちに囲まれた女はついていないとため息をついた。ちらりと時計を見れば待ち合わせの二時をわずかに過ぎてしまっている。
「すみません、急いでいるので」
「つれないなあ!こっちの方が楽しいってお姉さん」
「そんなめかしこんで来たんだから俺たちといた方が絶対得だよ〜?」
煙草くさい息まじりに顔を近づけてくる男たちに嫌気がした。もはや我慢の限界である。文句のひとつでも言って早く退散しようと考えていたときだった。
「お前のためにそいつはこんなにかわいい格好で来たわけじゃないさ」
「あ?なんだテメェ…」
肩にまわされた逞しい腕にどきんと胸が高鳴る。誰が見ても注意を引くほどかっこいいわたしの彼氏がそこには立っていた。どうやら待ち合わせの時刻に来ないわたしを心配して様子を見にきてくれたらしい。
「目のつけどころはいいけどな、悪いが…She is taken.既に俺のもんだ。下卑助はお呼びじゃねえよ」
ひらひら手を降り、帰れと暗示して政宗はそのまま悠々とわたしをその場から連れ去った。
「まったくあんなのに捕まりやがって、時間くっちまっただろ」
「わ、わたしだって好きで引っかかったわけじゃない!」
「OK,OK...あんたが俺に一刻も早く会いたかった気持ちは分かるさ」
「な、」
「だが俺の貴重な時間をくったのは事実だ。代償はでかいぜ?」
「…どうせキス一回とかでしょ」
「よく分かってんじゃねえか」
仕方ないなあ、背伸びをして頬にキスをプレゼントしてやる。それだけじゃ不満だったらしい政宗は、彼から唇を押し付けてきた。まったくどこが代償はでかいの、随分お手軽に機嫌が直るんだから。
とは言いつつも腕を絡ませて仲良く歩き始めた彼女もまんざらでもない様子だった。
(100316)
要はバカップルなわけです。キザな政宗さまもいい…書いてて恥ずかしいけどね。英語を言わせたかっただけ。