ボーイズトーク


「ばっかじゃないの!」
「うーん、さすがにそれはまずいと思うね」

反応はどちらもひどい。たまたま授業が終わった後に鉢合わせたので、猿飛と前田を誘ってジャンクフード店に入った。
今更ながら自身のしたことに罪悪感が拭えない。そのことについてどう思うかと二人に聞いてみたのだ。

「女の子の告白を断るならまだ分かるけど、聞いてあげないってサイッテーだよ」
「どうせ幼馴染だからって自分とアイツの境遇に重ね合わせているだけだろ、てめえはよ」
「そうそう…だからそのちゃんだっけ?大いに同情しちゃう」

しみじみと猿飛は頷いて、政宗をキッと睨む。女性の敵だ、と言わんばかりだった。

「俺も政宗の行動はどうかな。ただでさえ告白ってすごく勇気のあることだよ。ちゃんがそれだけ覚悟していったことをさ、聞いてあげないっていうのは想像しただけで悲しくなる」
「まるで経験者のような口ぶりだな」
「恋の達人って呼んでくれても構わないよ!」
「……」
「だから、その態度が原因だって」

冷たい目で前田を睨むと諭される。あのとき俺はどんな目でを見ていたんだろう。確かにこいつらの言うとおり、聞かなかったのは悪かったと心底後悔している。ただ聞いたところで俺はどうしたらいいのか分からなかった。自分の気持ちが分からないのだ。
色恋とはとんと縁のない生活を送っていた。無意識に避けて、向き合おうとしなかった。

「問題は政宗がそのちゃんをどう思っているかってことさ」
「…それが分かれば苦労しねぇ」
「同情して付き合えっていうつもりはないけど、期待をもたせるのも残酷だってことを忘れないでよね」
「まさに今のお前だな、猿」
「いちいちうるさいよ」

機嫌を損ねたのかぷいっと視線を逸らして、買ったジュースのストローをがみがみ噛んでいる。前田は苦笑して、ストローで氷とかき混ぜていた。落ち着かないやつらだ。
俺は冷静に自己分析してみた。という人間について。俺とあいつは幼馴染だ。小さい頃同じスイミングスクールにいて、恥ずかしい時をいっぱい見られたが、俺にとっては姉貴分のように頼もしい存在だった。再会したはすっかりかわいらしい女子高生だった。身長だって俺の方が高い。なんつーか、守ってやりたいっていうのだろうか。もちろんのことは好きだ。ただそれが恋愛としての好きかと問われると非常に困る。

「恋人になった瞬間にいつか絶対に終わるって思うんだ」
「…?」

ぽつりとこぼした言葉に猿飛と前田は首をかしげる。

「友達だっていつまでも続くものじゃねえ。ただ恋人になるより続くってことは分かる。恋人になるってことは、もっと早くにあいつと別れが来るってことだ。だから俺は今の関係を壊したくない」
「相変わらず小難しいことを竜の旦那は考えるね〜」
「でもその終わりがどういう形でやってくるかは誰にもわからないことだし、やってみなくちゃわからないこともあると思うけど。そればっかりは本人の気持ちだしなぁ」

前田の言うとおりだった。要はやっぱり俺の気持ち次第なのだ。俺がどうしたいか、それに全てがかかっている。俺は一応礼を言って(猿飛にはせいぜい他の男に取られないようにな、と忠告し)帰宅した。

そうして一本の電話があいつからかかってきたんだ。


(100712)