竜の咆哮


隕石が落ちてきて、クレーターでも出来たのか?と思うほどに、地面は抉られていた。その強い衝撃に放った本人ですら驚きで腰を抜かす始末である。しゅわしゅわと熱気のような、雲散した霊力が漂っていた。

「やっ…た……?」

身を乗り出して、秀吉の姿はないかと確認する。そのの目の前に、霧の中からぬうっと大きな掌が出てきた。拳は満身創痍といった様子でぼろぼろになり、かろうじて立っている秀吉が穴の中心にいた。
また、倒れてはいない。けれど、あともう少しというところだ。それだというのににはもう放出するだけの霊力は残っていない。

「残念だったな、その程度では我を倒せぬ。我は屈せぬ、決して膝をつきはしない!」
「そんな……」

は一瞬目の前が真っ暗になった。もう手立てはない、この大御神を止めることはできない。

「しっかりしろ、!」
「! ま、政宗…」
「ほう…まだ生きていたか」

先ほどまで呻いていたはずの政宗が、荒い呼吸を整えて、を叱咤する。その手には六本のうち一振りの刀があった。まだ戦う意思は消え失せていない。政宗はまだ諦めていないのに、が諦めることなど出来るはずがない。

「独眼竜!」

後ろから更に声がかかる。駆けつけてきたのは家康だった。それだけじゃない、元親も、孫市も、幸村も、元就も、……秀吉を止めようと来た者たちがいる。

「Ha! ちょうどいい…、俺にあいつらの神気妖気霊力なんだっていい、力を集めろ」
「えっ!?そ、そんなこと」
「できないとは言わせねぇ。独眼竜の女なら、それくらいやってみせろ、you see?」

変わらない、大胆不敵なその笑みも、どこからやってくるのか分からないその自信も。無茶な注文ばかり言うことだ。

「うん、やってみる」
「……おい、俺たちはまだいいとは言ってな…いてっ」
「元親、少し黙れ」

孫市の容赦ない鉄拳制裁が行われる傍らで、は彼らの力を政宗へと繋げる橋渡しをする。

「宜しく頼む、独眼竜」
「言われるまでもねえよ」

政宗はすっと刀を構えた。もはや集めて膨大に混ざり切ったものは、何なのか分からないが、それでも強大な力であることは分かる。
秀吉は黙ってそれを受け止める姿勢を見せた。お互いにこれが最後であると理解している。どちらが先に倒れるのか、それで決着がつくはずだ。

「Rest in peace. HELL DRAGON!!」


(131108)