作戦会議(ver.伊達)


がじがじと明らかに嫌そうな顔をしてストローを噛む男、伊達政宗。割りと硬派な彼にも今年になってついに彼女が出来たそうだ。
つまり恋愛については大先輩ということになるわけで、そんな彼を今日は無理矢理誘ってランチへ連れ込んだ。

「で?当然ここお前のおごりだよな」
「せこいこと言わないでよ、わたしと伊達の仲じゃない」
「帰るぞ」
「ごめんなさい、助けてください」

席を立とうとする伊達に縋りつくとまわりの視線に耐えかねたのか、しぶしぶまた座ってくれた。わたしはメモを取り出して、さっそく伊達に質問をと思ったがその前に待ったがかかった。

「俺のことはどうでもいいだろ。それよりもまずはと元親のことを聞かせろよ」
「長くなるよ?」
「手短に話せ。キスくらいはいったか」
「ええええちょっと伊達さん!」

何を言い出すの、と慌てる。まだ付き合ってもいないのにそんなに進展があるわけない。すると伊達は呆れた顔で椅子に凭れかかった。

「てっきり仲良く話しているから俺はのろけ話の被害者になのるかと思ったぜ」
「そうなるためにもこれからどうすればいいのかなって話だよ!」
が告白でもすればいいじゃねぇか。当たって砕けて来いや」
「それが出来たら苦労しない…告白する勇気なんてないもん…」

確かにこの思いを伝えようと試みたことはあったが、まずメール。あれから続いてはいるものの好きと二文字書いて送ろうとしたとき羞恥心が込み上げて送信ボタンが押せなかった。やはり直接と思ってもあの眩しい笑顔を見るだけでその状況に満足してしまう。

「しゃあねぇな。俺が一肌脱いでやる」
「本当!?」
「その代り貸しひとつだぞ」

そう言って伊達はおもむろに携帯電話を取り出した。何をするのだろうと見守っていると、彼は誰かに電話かける。まさかとちょっぴり嫌な予感がした。

「おい、元親か?」

伊達の第一声に固まる。心の準備もなしに電話に出ろと言われたらどうしようかと冷や汗が浮かぶ。

「今?といる。それがよ、あいつお前と花火大会に行きたいらしい」
「ちょっと伊達っ」
「代わるぞ、ほら

勝手に何をと身を乗り出すと、そのまま電話を渡された。無理だよって口ぱくをしてもぐいぐい押しつけるものだから仕方なく電話を取った。元親くんを待たせるわけにはいかない。

?」
「お、お電話ただいま代わりました」
「ぶはっどうした改まってよォ!それより花火大会って瀬戸川のやつだろ」
「うん…あのでも伊達の嘘だから…」

もごもごと恥ずかしさに顔を赤らめながら言うと、隣でこれみよがしに伊達が舌打ちをする。

「そうか。残念だな、ちょうど空いていたんだが」
「えっ、うそ?」
「嘘を言ってどうすんだよ。だからその…よかったら一緒に行かねぇか?」
「行く!行く行く行く!」

そのあと詳細を話してから、二人で花火大会へ行く約束をこぎつけた。夢見心地で電話を切ると物言いたげな顔でこちらを見る伊達。

「おごらせていただきます、伊達様」
「当然だ」


(090809)