伊達軍は先の戦を勝利に収め盛大に宴で賑わっていた。いつもは凛々しい表情の政宗様も今日は喜びに充ち溢れていた。当然だろう。なぜなら彼は天下分け目の戦を成し得て徳川軍を打ち破ったのだ。まったくもって彼と、片倉殿、そして雑賀殿のお働きには感服する。
政宗様はこれから世界にも目を向けて行くと理想を熱く語った。やはり素晴らしいお人だと改めて感じいる。そのようなお方の妻になれたことを誇りに思った。
「奥方もいかがです?」
「ありがとうございます、雑賀殿」
さきほどまで輪の中心で大杯に注いだ酒を一気に飲み干していた人物、雑賀孫市殿。雑賀集を束ね、友人である豊臣秀吉と共にしていた彼は今では伊達軍に在籍を置いていた。少しお酒と女には弱いのが玉にきずではあるが、悪い人物ではない。
「ふふ、皆が楽しそうでわたしも嬉しいです。政宗様もあのような笑顔、久しく見ませんでしたから…」
「奥方殿がいらっしゃるからでしょう、今宵のあなたはいつにも増して美しい」
「褒めても何も出ませんよ」
「いやいや参ったな、俺の言葉を信じてくださいよ」
「孫市!貴様人の女にべたべたと触れるでない!」
酒のせいか顔を真っ赤にしてどなり散らす政宗様に孫市殿はそんなつもりはないと顔を青くして弁解する。それがまたおかしくて笑みがこぼれた。そっと宥めるように彼の手を取って、頬に寄せる。
「政宗様」
「なんじゃ」
「とても幸せでございます」
「……儂もだ」
(090906)
一日過ぎてしまいましたが、442歳のお誕生日おめでとうございます。しかし孫市がしゃしゃりすぎましたね。