彼はいつだって横暴です
眠たい目を擦ってリビングを降りてきたわたしは、人の席に我が物顔で座っている男を見て眠気も吹っ飛ぶほどぎょっとした。
「な、ななな!」
「よォ…邪魔してるぜ」
本人を目の前にしてお構いなしにも程があるだろう。母が作ったトーストを頬張り、上品にスープを召し上がる俺様何様伊達様は今日も絶好調のようだった。
相変わらずこの男は遠慮というものを知らない。特に家が隣同士の幼馴染に対してはまるで自分の下僕、従者、パシリ、のように扱う。このままでは一生政宗に頭が上がらない生活だ。もちろんわたしも最初のほうはいちいち突っかかっていたのだが、逆らうと恐ろしい復讐が待っていることを理解した。
そこで彼が手をつけ始めたものにハッとした。と名前が書かれたプリン…それは紛れもなく昨日楽しみにとっておいたわたしのプリン。
「ちょっと政宗!それわたしの!!」
「…Ah,気づかなかった」
「それだけでかでかと書いてあったのに気づかないわけな」
いでしょう、と続くはずの言葉は政宗の氷のような笑顔でぐっと詰まってしまった。それは起こる寸前の警告だ。そのまま目の前で人のプリンをまるまる平らげて政宗はテレビのある方のソファにどっかりと陣取る。
はため息をついて席に着いた。う、政宗のせいでお尻が生暖かい。香ばしく焼かれたトーストを力なく食む。いつものことだ。そう、政宗の理不尽さはいつものことだ。必死で怒りを我慢して言い聞かせる。
「おい、もっと食べるpaceをあげろ!学校遅れちまうだろ」
こいつ本当に殴ってやりたい。
(100422)