彼とは離れられない仲です
小学校も中学校も高校も家から近く、常に同じところに通っていた二人は自然と登下校をいつも共にしていた。ある種の習慣と言ってもよい。そして小学校からある悪習といってもよいものも未だに続いていた。
「最初はグー!じゃんけん!」
ポイ、で勝敗は決まりは政宗から笑顔で荷物を渡された。そう、次の曲がり角まで相手の荷物を持つというくだらない遊びが私たちの中では既に暗黙のルールなのだ。
しかしこの男、何を入れているのか分からないくらい荷物が軽い。同じくらいの授業を受けているはずなのにこの軽さ…さては教科書を持って帰っていないな。大方筆箱に元親くんと貸し借りしているエロ雑誌くらいだろう。
「相変わらずじゃんけん弱いな」
「いかさまでもしてるんじゃないの」
「I am innocent!」
俺は無実だ、と芝居がかっているほど大げさに嘆いた。確かにじゃんけんでいかさまの仕様がないのだが。もしかしたら癖でもあるのかもしれない、今度からもう少し考えて出そうと次の曲がり角までとぼとぼ歩いた。
学校までの最後の曲がり角で再びじゃんけんの構えをしたところで、突然前方から名前を呼ばれる。クラスメートの女の子たちが手を振っていた。
「、おはよ〜」
「おはよう!」
これは逃げるチャンス到来だ。はここぞとばかりに、持っていた政宗のスクールバックを本人に押し付けて彼女たちに走り寄ろうとする。ところがそこで痛いほど腕をつかまれて動きが止まってしまった。
「…ええと…政宗さん?」
「あいつと俺、どっちを優先すべきか分かっているよなァ」
ぎゅうぎゅうと痣が出来そうなほど握力に物を言わせて脅してくるのでわたしは観念してじゃんけんをすることにした。満足そうに再び勝った政宗はわたしにバックを渡す。結局この幼馴染から逃れる方法などありはしないのです。
(100424)