彼には助けられています
いくら幼馴染と言えどクラスが常に同じという漫画みたいな奇跡は起こらない。とはいえ、ばっちり隣のクラスなので体育などでは会うことも多いが。昼休みに入ると強制連行されることも多々ある。
おなかがぐうぐうと鳴る四時間目をようやっと切り抜けて、待ち遠しかった昼休みの時間が訪れた。お弁当袋を取り出して机をくっつけ始めている友達のところへ駆け寄る。
「あれ、今日は旦那のところに行かなくていいの?」
「だ、誰が旦那よ!」
からかい混じりに向かいいれられたところで教室の窓側から小さな悲鳴が上がった。見れば必死にこちらへ逃げ込んでくる女の子。その後ろを見ればブーンと嫌な音を立てて追いかけてくるハチだった。本能的に逃げなければと察し、散り散りになる中でなぜかハチは方向を変えてを追いかけてくる。
「わあああ、来るな来るな!」
机を掻き分けて必死の形相で逃げるが誰も助けてはくれない。何せハチだ。毒を持って飛んでいるものを誰が捕まえられるというのか。はもはや逃げ場はないと思い、教室から出てそのまま外へ誘導しようとする。ドアを開けた瞬間、間の悪いことに政宗が立っていた。ああ、こいつ弁当忘れてたかりにきたなといつもの経験から即座に理解したがそれどころではない。
「ど、どいて!」
「あ?お前いつから俺に指図するように…ん?」
塞がる政宗の脇をくぐって廊下に逃げ及ぼうとしたら、がっしりと腰を抱えられる。もはや刺されるのを待つのみなのかとがっくりしたところブチッと目障りな羽音よりも嫌な音がした。
「な、なに?」
体を捻って後ろを振り返ると何食わぬ顔で拳を掲げている政宗、それに拍手するクラスメートの皆さん。何が起きたのか分からず呆けているに政宗は手のひらを広げて見せた。そこには無残にも握り潰されたハチの姿が…こ、こいつ素手で殺したというのか!?
「ったく、面倒を引き起こしやがって。クラスの皆さんに謝れ」
「…え、ごめんなさい?」
「よろしい。じゃあさっさと屋上に行くぞ馬鹿、弁当持って来い」
政宗から解放されてドンッと乱暴に背中を押されてクラスに入れられる。デート頑張ってねとひらひら友達に手を振られて、デートだったらどれだけ楽だろうとげんなりした。
(100424)
本当はバッタだけど、まあいいよね!